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Lee-Byung-hun addicted

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君は僕の運命 第3話

『君は僕の運命』 第3話

二人は溢れんばかりの温かい湯船につかっていた。
揺は口を開くことなくじっと窓から雨が降りしきる空を見つめていた。
そんな揺を問い詰めることもなくビョンホンはただそっとお湯の中で彼女を抱きしめていた。

以前聞いた裏庭の植え込みの植木鉢の下に非常時用の合鍵を隠してあるという幸太郎の言葉を覚えていたビョンホンは逗子の家に着くと手早く鍵をあけお風呂を沸かし部屋を温めた。
立っていることさえ出来なくなった揺のずぶ濡れの服を脱がせ抱きかかえて湯船に入れた。
とにかく必死だった。
このまま揺が死んでしまうんじゃないかおかしくなってしまうんじゃないかそう思うと心配で気が狂いそうだった。
とにかく冷えた身体を温めないと・・・その一心だった。

そして今、温かい湯に浸かり、揺は自分の腕の中にいる。
彼はそれだけでもこの上なく幸せな気さえしていた。

「揺・・・・」彼がそっと優しく声をかける。
「揺・・・寒くない?」そう問いかける。
揺は力なく頷くと一言「ごめん」とつぶやいた。
彼はそんな彼女を優しく抱きしめる。
「ビョンホンssi・・・やっぱりどうしても諦められないの。
また会えても嫌なの。
ホンはあなたがくれた宝物なのに・・大事なの。
自分の命より。
この気持ちは変えられない・・・。
嫌だ。ホンを殺しちゃうなんて・・やっぱり出来ないよ。」
そう話す彼女の目からはまた大粒の涙が溢れ出した。
「揺・・・落ち着いて。ほら。ホンが心配するから。」
ビョンホンはそういうと彼女の額にそっとキスをした。
「揺・・・よく聞いて。
僕がホンだったら・・・君を救いたいと思うと思うんだ。
君が元気だったら必ずまためぐり合える。
君がいなくなったらホンは一生生きて君に会うことが出来ないじゃないか。
だから君の体のことを一番に考えよう。
ホンは必ず戻ってくるから。
これは運命なんだよ。
まだホンに会えない運命。
君は病気と闘う運命なんだ。
時には逆らえない運命もある。
そんなときは運命を受け入れることも必要なんだよ。
受け入れた上に新しい未来を作ればいいんだ。
ホンに会える運命は僕らが未来で作ればいい。」

「運命なんて作れるのかしら。
あの子に本当に会えるの?・・・・・・・
あの子はそれで幸せなの?
ねぇ・・ビョンホンssi教えてよ。」
揺は泣きながら彼の胸を叩いた。
何も言わず彼はしっかりと揺を抱きしめる。
そして彼女の頭を優しく撫ぜ、彼女の背中を優しくなだめるように叩いた。
「ごめんなさい・・・そんなこと、よくわかってるの。
あなただって辛いこともわかってる・・・だから・・甘えるのが嫌だったから一人で出てきたのに・・・。
結局あなたに甘えてわがまま言って困らせて・・・私・・何やってるんだろう」
「いくらだって我がまま言って暴れればいいさ。・・いくらだって甘えていいさ。こんなことお前が元気になったらなかなかないんだから」
ビョンホンはそういうといつものようにニヤッと笑って揺の頭をクシャクシャと撫でた。
「・・・・・・」
彼の笑顔を見て揺は今までキリキリと張り詰めていた気持ちがふっと穏やかになっていくのを感じていた。
そして自然と釣られて泣きながら微笑んだ。
「そう。ホンは笑ってるママがきっと好きだから・・」
ビョンホンはそう言って微笑むと揺にそっとキスをした。
優しく温かい慈愛に満ちたキス。
「揺・・大丈夫。君さえいてくれればホンに会える運命なんて簡単に作れる」
彼は心の中でそうつぶやいた。

「どう・・落ち着いた?」
揺の髪をタオルで拭きながらビョンホンは訊ねた。
揺は気持ち良さそうに目を瞑りそっと頷いた。
「ドライヤーどこだっけ?」
「えっと・・洗面所になかったかしら」
揺はそういって立ち上がるとすぐその場にしゃがみこんだ。
「痛い・・・・」
「揺・・どうしたの?揺・・」
慌てて横にしゃがみこみ揺の顔を覗き込む彼。
「お腹が・・・・・・痛い」



「・・・子供が選んだんだな。」
綾に言われて揺を運び込んだのは揺が生まれた昔ながらの小さな産院だった。
橘家と懇意にしていて揺を孫のように可愛がる老医師はカルテに何かを書きながら一言そうつぶやいた。
「母親に意気地がないから子供からお前さんに引導渡したんだよ。
実に意志が強いしっかりした子供だ。
お前さんが父親か?
何で今まで挨拶しに来なんだ。
揺のじいちゃんも同然なのに。
ま、いい男だから許してやるが。
とにかくこれからが大変だろうから揺のこと頼んだぞ。
流れた子はしっかりしてるから必ず戻ってくるから。
お前はそれまでにちゃんと丈夫な身体になっとけ。
もう何千人も取り上げたわしが言うんだから間違いない。」
そういうと老医師は揺のおでこをしっぺした。
「もう帰っていいぞ。
ゆっくり家で安静にしとけ。
全く紅白歌合戦が始まっちまったよ。
何かあったら電話しろ。すぐ行ってやるから。
来年はいい年にしろよ。
しかし揺が子供産むなんてわしも年を取ったわけだ・・。」
ブツブツつぶやきながら振り返ることなく彼は手を振り病室を後にした。
ビョンホンは揺の目からこぼれた涙を指で拭った。
そして二人は目を合わせそっと微笑みあう。
「きっとまた必ずホンに会える・・・」
二人の心に同じ想いが溢れる。
老医師の言葉は二人の胸にお守りのように心に残り、希望を確信に変えるのに充分だった。



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